この時のことは面白すぎて、今でも絶対に
忘れられない出来事だ。
10年前の今日、時計の新作の発表会でスイスの
バーゼルに行った後に、一人でスペインに
足を伸ばしバルセロナに立ち寄った時の話だ。
夕食を取ろうと地元で人気のレストランに
行くと、席はほぼ満席で、店員が店内を見回して
席を探してくれていた。
そんな時突然カウンター席から、
「あれ?孝太郎さんじゃないですか!隣空いて
ますから、どうぞどうぞ!」と声を
かけられたのである。
しかし、困ったことにその声の主に、全く
記憶がないのだが、相手はすごく親しげである。
ここは、適当にごまかして、その隣の席に
座るのが得策であると考えて、
「あれ?偶然ですね~!」などと返しながら、
私も親しげに対応し、結局隣の席で食事を
することになった。
このときは、暫く会話をしていれば、誰だか
思い出すに違いないと思ったのだ。
しかし、何人か共通の知人の話などが出てきた
ことで、取りあえず時計業界の人だと言う
ことが解った以外には、困ったことに何処の
誰なのかは、全く思い出せないままである。
とはいえ食事の時間は結構楽しく過ごし、
折角盛り上がったので、もう一件飲みに
行きましょうとなり、二次会にまで及んで
しまった。
そして、更にお酒が進んだこともあって、
二次会は食事以上の盛り上りになり、
気がつけばまあまあ遅い時間になっていた。
折角、バルセロナの地で楽しく過ごした
目の前の人が、誰だか解らないまま別れる
というのも何なので、別れ際に
「楽しかったので、また飲みましょう」とか、
調子の良いことを言ってみた。
そして、そのついでに、「ところで、この後に
及んで、とっても言いにくいのですが、
どちら様でしたっけ?」と、聞いてみた。
暫くキョトンとした相手は、その後大爆笑
して、「ええええ???今さらですか!!!!
凄いですね~!」と言いながら、快く何処の
誰なのかを、名乗ってくれた。
そんな素敵なバルセロナの夜の思い出である。(笑)